世界は四角形からできている


私の個人名刺の裏、プロフィールに「趣味」の欄があります。

そこに「絵画制作(幾何学構成)」と書いてある。

これを見つけた人は尋ねてきます。

「絵を描くんですね、どんな絵を?」

「マルと三角と四角を組み合わせた絵です...(自信がないので、遠慮がちに)」

不肖たる私の師、サトル・サトウさんは、登米市出身でパリ在住の世界的な造形作家です。

毎年夏になると、仙台を拠点に2、3ヵ月、日本に滞在し、複数の個展や登米市での子どもと大人へのワークショップなど各地で活動しつつ、旅も楽しんでおられるようです。

6年前の夏、高校の先輩でもあるサトルさんから誘われ、彼の主宰する勉強会「アート ジェオ コンストゥルイ・幾何学構成アート仙台」に参加し、末席を汚すようになりました。

今回初めて描いた絵でグループ展を行う、と言われ、ドン引きしてから、毎年の出展も6回を重ねました。幼少よりずっと絵が苦手な私がこうなるに至った経緯は、改めて書きたいと思いますが。

サトルさんの作品には、例えばこんな絵画。


それからこんな彫刻も。

こんな造形も。


膨大な作品群を図録にして出版するサトルさんですが、ここ10数年ほどは「正方形に捧げる」という一連のシリーズを中心に作風を展開しています。

そのうちひとつの小さな作品が拙宅の玄関を飾っていますが、掛ける前と後では空気感が異なるようになりました。作品のユーモアを孕んだ生真面目さというか、そんな絵画に空気が感染したような。

私の絵画を見た方から、この作品にはどんな意味を込めて描いているの?と怪訝な気配をふくんだ疑問を呈されることがありますが、私の場合、相応の自己主張は作品にはありません。できあがった作品を見てからタイトルを決めたりしますので。

サトルさんも同じ思いなのか、私など理解もできぬ深淵な世界観なのか、作品については多くを語りません。

ある席の会話でのなかで、ああ、そういうことか、と思ったこともありましたが、公式のアナウンスでなかったのでここでは控えます。

さてサトル・サトウ氏の渡仏50周年特別展「SATORU展 PART2」が、サトル・サトウ・アート・ミュージアム(登米市)で開催されています。ぜひご覧にお出かけください。

廃校になった小学校校舎を改装利用した、気軽に入館できる美術館です。

PART1の前期作品を継いで、今回は近年の作品なので、「正方形に捧げる」のたくさんのバリエーションを鑑賞できます。

このミュージアムのサイトにサトルさんが、幾何学構成絵画の意義と歴史について書いています。

その一節。

宇宙や大自然、又、身体の小宇宙は、実は、見事に幾何学構成されている訳ですね、(中略)私達もまた、神社、仏閣、庭園、茶室、家具に至る迄、幾何学構成的比例空間に身を置いているのですから。

特別展の初日に鑑賞に出かけました。

サトルさんの作品を見ていると、喜怒哀楽の感情がそっと沸き立ってそっと消え去る、そんな不思議な抑制感が味わえます。

また、本場パリで切磋琢磨された作風なのに、登米の「ふるさと」を感じるのも不思議です。

私見ですが。

サトル・サトウ氏の渡仏50周年特別展「SATORU展 PART2」
サトル・サトウ・アート・ミュージアム
2019年10月1日~12月28日

BGMは勝手ながら、これにしてみよう。