バレエ「眠りの森の美女」を映画館貸し切りで

お目当ての映画があって、映画館にでかけたのに時間を間違えてしまい、仕方がないので、いちばん開演の近い映画をみることにしました。

チャイコフスキーのバレエ「眠りの森の美女」。

「英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマシーズン 2019/20」と題したロイヤル・バレエの舞台の撮影版です。

管弦楽曲としての組曲「眠りの森の美女」は数え切れないほど聞いてきたけれど、全曲を聴くのも、バレエ上演を観るのも初めてでした。3時間の長尺。指揮はサイモン・ヒューイット。

台本は、悪の妖精に魔法をかけられ、100年間眠ることになった姫を、狩りに来ていた別の国の王子が見つけて、キスをすることで魔法が解けるというシャルル・ペローのおとぎ話。

オーロラ姫の役は、日本人の金子扶生(ふみ)さん。クラシックバレエの中で技術的にも、表現的にも難しい大役だそうですが。当初別のバレリーナが踊る予定だったが、収録当日に怪我をしたため、リラの精を踊る予定だった金子さんが急遽(当日の午後2時に!)抜擢されたとのこと。

相当なプレッシャーがあったでしょうね。こちらも固唾をのんで観ていましたが、大輪の花のような笑顔。堂々と最後まで踊り切り、最後のカーテンコールではとても晴れ晴れとした表情でした。ブラボー。

テレビで観るのとは違い、映画館のそれはやっぱり迫力が違います。

バレリーナがバランスを崩す直前にパートナーが支える瞬間や筋肉の盛り上がりや震え、汗や激しい息づかいなども仔細に伺えて、この人たちはこのステージに立つまでどれだけの鍛錬を積み重ねてきたんだろうと、得も言われぬ気分になりました。

森のなかをフロリムント王子が彷徨い歩く。リラの精が、茨に囲まれた城のなかに王子を導く。運命の人を見つける。しかし彼女は幻のごとく、現れては消え。独身の息子のことを重ね合わせてみてしまいました。

実は、その日の観客は私ひとり。

こちらも代役となった可憐なリラの精。長靴を履いた猫と白猫のコミカルな踊り。青い鳥の超絶技巧。悪の妖精カラボスのかっこよさ。オーロラ姫とフロリムント王子のパ・ド・ドゥ。3時間おなかいっぱい。おとぎの国のような衣装も楽しめました。

あたかもコヴェント・ガーデンのホールにいるかのように拍手をしつつ、すっかり没入することができました。贅沢な時間をありがとうございました。

次はオペラ、プッチーニの「ラ・ボエーム」を楽しみにしています。